SFAコラム

「SFAで具体的な効果を得るために」 第七回 2009.2.27
佐藤 紅志

営業会議でスクリーンに映し出された、予実のグラフ(表でもいいのですが)や配られた資料を見ているときに、皆さんは何を考えていますか?

自身や自組織の成績がまずまずであれば、少し得意な気持ちで周りを見渡して反応を観察しているでしょうか。いえいえ、最近の景気では、まずまずどころか、落ち込み幅の少なさを競っていたり、このままだと会社やこの業界は大丈夫なんだろうかと不安になって、通勤途中の携帯で見た転職サイトの条件を思い出しているでしょうか。

会議室でいくらグラフや表を眺めていても、乖離した数値が埋まるわけではない事は誰しもわかっていますが、具体的にどのようなアクションをとれば良いのかがわからず、参加者の意識が拡散したままのミーティングになってしまい、貴重な時間を浪費してしまっては、現状を打開するパワーも失われてしまうかもしれません。

同じような業種業態の組織体が、同じような苦境に陥った時であっても、一方の組織においては、一つの目的に向かい、その事柄に主体的に取り組む思考をもち、象徴思考の有効な経験情報を、意識された思考と無意識の思考情報に整理し、意識された象徴思考を論理思考とその活動に昇華させることができることに私たちは注目しています。

先日たまたま見ていたNHKのニュースで、ある工作機械の部品メーカーが、コスト削減のために、工場を停止している顧客を、有力なセールスリードとして捉え、新しい部品の効果を試してもらうために営業を強化しているという事例が紹介されていました。

「工場が停止している時のみ部品交換の効果を測る事ができる」という要因のみに意識を置くと「ラッキーな商売もあるのだな」程度にしか考えが及ばないでしょう。

もともとこの部品メーカーは、顧客が工場の稼働を下げるほどの受注減に見舞われている中でしたが、ともすれば委縮しがちな営業マインドを「停止している工場であれば、新しい部品の効果を試して頂けるかもしれない」という直感でつかまえた象徴思考を論理活動に転化させた好例と言えると思います。

実際の試用場面では、効果が確認される事もあれば修正が必要な場合もある事が、映像では展開しておりましたが、そもそもそのような土俵、つまり顧客は「製品を勧めるだけでなく、何をどのようによくしてくれるのか?」という命題に取り組んでくれるパートナーであると認識してもらう事こそが重要です。

この部品メーカーが売り上げが落ち込み生産ラインを止めている顧客に対して提案を行うことは容易ではなかったことは簡単に想像できます。

そこでは熱意を持ったコミュニケーションにより、閉じた顧客の心を開かせるための象徴思考と、歩留まりの向上により顧客目的に沿う提案であることを納得してもらうための論理思考による客観的な数字も必要だったと思います。

営業会議の場を「どこか買ってくれるとこないかなぁ~」という、他人任せの思考で過ごしていては実のある提案に結びつきません。

どの顧客が、どんな状況で何を望んでいるか、望んでいないのかについて、営業担当のみならず、例えば技術や保守担当など、組織を横断したメンバーが参加し、全員の意識がそこに向き、それぞれの現場の立場から妥協のない意見が自然に出てくるように、共通の意識が持てる効率的なツールを活用してこそ、それがSFAと言えるのではないかと私たちは考えています。

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「SFAですすめる段階的な情報共有(3)」 第六回 2009.1.13
佐藤 紅志

昨年来の急激な景況の悪化については、苦慮されている方も多いかと思います。 私自身も、長い間お付き合いを頂いていた、様々な業種のリーディングカンパ ニーにおいて、普段は沈着冷静な担当の方が、酷く狼狽されている様子を見るに つけ、今回の世界規模での経済状況の深刻さを痛感致している次第です。弊社自 身においても、成約寸前の商談が、現在の景況感を受けてペンディングになって しまうケースが発生するなど、これまでにはあり得なかった事態に危機を体感し ています。

とは言え、日本人が伝統的に肝要とする、勤勉さ、節約の精神や技術への拘り は、未曾有の世界規模の不況から、立ち上がるときに、必ずや必要とされる要素 をたくさん持っているのではないかとの思いが募りますし、日々刻々と変化する 状況おいてもなお、心乱される事なく、自社の強みを活かして、この難局を乗り 切ろうとする企業と、そこで努力される皆様を少しでもお手伝いすことができれ ば、私共といたしましても、これに勝る喜びはありません。


さて、それでは今回も「意識共有」によって、営業組織の活動を効果的に進める ポイントについて記述を行いたいと思います。

前回のコラムでは、論理思考と象徴思考の二つの観点を組み合わせて物事を捉え る人の心を指している「バイロジック」と言う、文化人類学者の中沢新一氏の言 葉をきっかけに「意識共有」とは何かについて考察を始めてみました。

「論理思考」に基づく行動原理は、情報共有と数値共有によって、表出化された 形式情報を元に行われます。それは「この顧客の売り上げはリベートの次の段階 までいくらである」とか「自身または組織のコミットメントに対する進捗が何 パーセントである」「コンペの提案機能価格はしかじか」「リース契約が終了す るまではあと何日」等の、誰が見ても判断にぶれのない情報のことです。もちろ ん、そうした数字がほしいタイミングで取得できているか、またはその数字が正 しいのか、数字やシナリオのブレークダウンを適切に行うことができるのか、な ど情報を有効に活用するための要件はありますが、それらの事項については粛々 と論理思考に沿ったソリューションの実現が可能です。

また、角度を変えてみた場合の論理思考の要件としては、その思考プロセスにお いて論理の飛躍がなく、そのプロセス構造を開陳された誰もが安心して納得でき るという点が挙げられると思います。前記例「この顧客の売り上げはリベートの 次の段階までいくらである」件の思考プロセス構造の分解を進めるとすると「次 の段階に至る発注額とリベート利益額の損益はいくらである」とか「リベート損 益額を組み込んだ場合の顧客原価は何%下がる」などが挙げられると思います。 SFAツールの活用観点から見ると、そうした情報については、利用頻度を勘案 し、ツールへの機能組み込みにより効率的にアクセスする事が可能になるでしょう。

一方、象徴思考というのは「全体的把握を行い、それから象徴的に他の意味の領 域をまるごとつかんで直感的に把握すること」とあるように、今見えている情報 を、自組織、顧客、およびその関連性、粒度、各プレーヤにおける立ち位置等 々、時間軸も含めた無数の相対関係を、直観的に把握した上で、思考するという ことです(それぞれが個別斟酌検討するに深い事項の列挙ですが、文脈を鑑みお 許しください)。文字にするとやや難解にも思われますが、実は誰しも、何らか の論理に基づく「バイロジック」を発動し、なんとなく雰囲気を察したり、気配 を感じたりした中で、日々の活動を行っています。

ここで問題となるのは、それらの象徴思考が意識的に思考されているのか、無意 識に思考されているのかという点です。一般論として、現在のような、マクロと しては供給過多である状況においては、象徴思考は論理思考に比べ、優れた効果 をもたらす事が多いのですが(その要因と分析についてはまた別の機会に)、象徴 思考の意識/無意識レベルが曖昧なままであると、組織的持続的な効果を得るこ とができません。残念ながら、SFAを導入する場合にそのような仕組みに踏み込 まず、目の前にある形式情報と論理思考のみをロジックとしたまま運用に入り、 効果が上がらない結果として、利用度も向上しないという負のスパイラルに陥い るケースがよく見受けられます。

また、やっかいな事に象徴思考は論理思考のように「構造を開陳された誰もが安 心して納得できる」ことが困難であるという特徴を持っています。なぜならば、 今見えている情報を、自組織、顧客、およびその関連性、経緯、粒度、自身の立 ち位置等々、プレーヤー間の時間軸も含めた無数の相対関係を、直観的に把握し た上で、思考するということは、その事柄について主体的に取り組む思考をもっ た人間のみが行うことができ、そしてその共有を行うことができるるからです。 個別の事柄について真摯に取り組んだとしても、個の認識について差異が発生す るのは当然ですから、取り組む思考がなければ、意識を共有することはとても困 難です。

つまり、営業活動に効果的な「バイロジック」を発動させるためには、ステーク ホルダーが一つの目的に向かい、その事柄に主体的に取り組む思考をもち、象徴 思考の有効な経験情報を、意識された思考と無意識の思考情報に整理し、どうし ても共有の難しい無意識の象徴思考(本人さえもよくわからないままなぜかブ ルーオーシャンを見つけてしまう‥)を除き、意識された象徴思考を論理思考に昇 華させることをどれだけできるかがポイントとなってきます。

そのために、最も有効であると、私どもが考えているのは「(必死の)コミュニ ケーション」と「コーチング」です。弊社の考える優秀な営業マンが、象徴思考 を働かせ、直観でつかまえた「顧客が営業担当者に望む事」の第一位が「専門知 識と問題解決能力」であることがフィリップ・クレインドラー氏とゴパル・ラジ グル氏によって、DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー別冊9月号(2008)に よって証明されていたことは偶然ではありません。


次回は、この「顧客が営業担当者に望む事」「専門知識と問題解決能力」に「コ ミュニケーション」と「コーチング」がどのように影響を及ぼすかについての話 を進めたいと思います。

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「SFAですすめる段階的な情報共有(2)」 第五回 2008.11.28
佐藤 紅志

前回のコラムでは、SFA導入の効果の1つとして、段階的な情報共有による組織力を向上させることが出来る点と、その情報共有については、段階を以下のよう整 理致しましたので、リマインドも含め、内容の確認をさせて頂きます。。

1.情報共有

 日々の営業活動のスケジュールや日報、商談などの客観的な情報と、それに伴 う主観的な情報の共有

2.数値共有

 顧客訪問回数、活動時間、商談数、売上見込などの、定量的な数値情報の共有

3.意識共有

 真剣な対話を通じて醸成される、チームとしての意識共有


【1.情報共有段階について】

上記の、それぞれの共有段階は、ITツールを用いることによりあるレベルまでは 容易に進められる部分と、どうしてもなかなか進まないレベルがあります。

一般的にどのレベルまで到達可能かと言う事は、組織の規模やリテラシーにより 大きな違いはありますが、共通する点はあるレベルまでの到達は比較的順調に進 められると言う事が言えると思います。

その部分までの情報共有段階を実施するにあたっては、導入を検討されるツール の善し悪しを測るという意味では、基本的には以下のような評価項目に左右され ます。

(1)一覧性を中心とした見やすさ

(2)思考を妨げない入力のし易さ

(3)一貫した情報へのアクセスのし易さ

これら意外にも、組織の文化や規模によってはカスタマイザビリティや、スケー ラビリティ等が重要なファクターとなる事もありますが、概ね直感的なルックア ンドフィールを備え、部門毎にアクセスするサーバーが異なるなどの状態では無 い限り、基本的な情報共有段階をクリアすることには、本質的に大きな障壁はあ りません。

ところが、実際の企業においては、政治的歴史的経緯などの要因によって、部門 間や支社間での統合が進まず、部分的な導入や異なるシステムを使用しているな ど、この段階をクリアできない組織も多くありますが、この点については、早急 な改善に取り組むべきで、目に見える管理コストや運用コストの改善が行える、 この段階は義務とも言えるのではないかと思います。

情報共有段階をサポートする各種メーカーから提供されている様々なグループ ウェア製品は、競合企業間の切磋琢磨により、ある程度のマーケットシェアを握 るものについては、上記のような評価項目やコストについて明確な差が無くなっ て来ておりますので、該当する企業にあっては、導入や統合の推進をされる事を 強く推奨いたします。


【2.数値共有段階について】

情報共有インフラが整備され、各組織毎に定量的な目標が設定されている営業組 織におきましては、活動予定と実績の共有から一歩進み、それらの目標に対する 数値的情報の共有が重要となってきます。

現在どれくらいの規模の商談が、何件存在しており、自身が関連する商談と目標 との進捗を確認する事は、通常のグループウェアからは一歩進んだ機能が必要と なり、いわゆるSFA製品と呼ばれるツールには漏れなくこれらの情報を管理する ことができるようになっています。

実際の現場では、スケジュール管理のグループウェアのカスタマイズ機能や項目 転用、汎用データベースを拡張して運用されているケースも多々あるようです が、結果としてオペレーション負荷が高くなったり、アウトプットの見やすさや リアルタイム性にも気を付けなくてはなりません。

数値共有段階での、ツール選択や運用時のポイントは、情報共有システムや、販 売管理系のシステムと重複する部分も多くなりますので、数値共有のために、二 重オペレーションが発生しない事や、重要な情報共有段階のアウトプットをグラ フィカルに確認できたり、また管理対象の項目を柔軟に定義できるか等が、あげ られると思います。


【3.意識共有段階について】

さて、第3段階として位置づけをしております意識共有については、情報、数値 と段階を経て、ツールの使い勝手などを論じていたそこまでのレベルとは、少し 次元の違う観点での取り組みをしてみたいとおもいます。

そもそも、意識とは何か、それを共有するとはどういう事かというテーマについ て掘り下げる場合は、その深度範囲を定義する、その前提が正しいのかについ て、共有を行うことが難しいのですが、ここでは、1つのとっかかりとして、文 化人類学者の中沢新一氏のバイロジックという言葉をとりあげたいと思います。

彼はバイロジックと言う言葉について「人間の思考方法というのは、コンピュー ター的な論理対立をビットのように組みあわせたりします。論理的な思考能力と 同時に全体的把握を行い、それから象徴的に他の意味の領域をまるごとつかんで 直感的に把握できるものをふたつを組みあわせて人間の心というのはできてい る」と定義しています。

この言説そのものは、対象性人類学とは何かという文脈の中で、意識と無意識が 同時に作動しているものとして人間を捉える事によって、従来のものの見方を変 革する事ができると述べていますが、ものの見方を変革できるかどうかはともか く、意識と無意識が同時に作動しているという捕らえ方は、意識共有を行う際の 大きなポイントになろうかと思います。


次回も意識共有段階について、引き続き記載して参りたいと思います。

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「SFAですすめる段階的な情報共有(1)」 第四回 2008.10.30
佐藤 紅志

営業マンのパフォーマンスを上げる為にはさまざまな方法がありますが、SFAがツールとしてサポートする領域は限られます。

私たちは、SFAがツールとして定着することにより、効果が上がることを提唱し続けておりますが、お客様のお話を聞くと既に他社様の立派なツールを導入しつつも、ツールの善し悪し以前に、過度の期待を持たれている場合があり、その事が定着しない理由の1つとしてあるようです。

ツールを導入さえすれば、売上や利益があがるなどと言う事はありえません。そのような論旨を持ってSFAツールやサービスの導入を勧めるベンダーには、充分に注意をされた方が良いかと思います。

そもそも、情報システムが「導入をもって効果を発揮する」領域というのは、定常的なプロセスを機械的に自動化する部分であり(それですらプロセスのカスタマイズは必要ですが)、少なくとも人間のみが行うことの出来る「判断や行動をサポート」する領域のシステムであれば、ツールを使用する側にも、意識改革と、それに伴うプロセスの見直しが必要となる事は、前回のコラムでも取り上げました。

意識改革と、それに伴うプロセスの見直しが必要となると言う事を、もう少しかみ砕いて表現ををさせて頂きますと、画面上に提示される数値やグラフなどの情報から「何を読み取り、何を感じて、どんな行動を行うか」という事です。

週に1回出力されていたレポートが毎日出力されるようになっても、その部分、繰り返しますが「何を読み取り、何を感じて、どんな行動を行うか」についての、それぞれの精度を上げなくては、結果に対するインパクトはあまり変わらないのです。

実際の導入場面においては、その点について本質的に理解されていない事が多く、SaaSかパッケージかなどと非本質的なことばかりに意識が行ったり、ツールの知名度や、華美なグラフが並んでいる画面の様子を見て、SFAを導入したような気になっているようでは成果は得られません。

それでは、どのようにしたら「何を読み取り、何を感じて、どんな行動を行うか」についての、それぞれの精度を上げる事が出来るのでしょうか。

そのような命題に対して「全ての組織に適用できる解決策」が「ポン」と出て来る筋合いのものでは無いことは、ご同意いただけるかとは思いますが、私たちは、数ある解決策のひとつとして「組織内の情報を共有するレベルを、段階的に高めていくこと」が有効ではないかと考えています。

そして、情報を共有する際の内容を、以下のように整理しています。

1.情報共有
 日々の営業活動のスケジュールや日報、商談などの客観的な情報と、それに伴う主観的な情報の共有

2.数値共有
 顧客訪問回数、活動時間、商談数、売上見込などの、定量的な数値情報の共有

3.意識共有
 真剣な対話を通じて醸成される、チームとしての意識共有


営業マンは、情報マンでもありますから、定性不定性に関わらず、自身の活動に有効な情報を、その時々の状況に合わせて効果的に使える営業マンは例外なく優秀な成績を収めるデキる営業マンなのだと思います。

そして、そうではない普通の営業マンとの違いは、上記の共有レベルの全てに及んでいると思いますが、なんでこんなに違うのかと嘆くだけでは状況は変わりませんし、いっぺんに全てのレベルを上げるように叱咤激励したとしても、なかなか難しいでしょう。例外もあるのかもしれませんが・・・。

まずは、誰が、いつ、どの顧客に行き、誰に訪問して、何を聞いてきたか、言ってきたかについては、顧客に関連するメンバーは共有するようにしましょう。この時に大事なことは、可能な限り組織横断とすることです。

もちろん、どの顧客に対して、どの組織までを対象とするかにつきましては、当然の事ながら、様々な組織内事情もあるでしょうし、顧客に対してもターゲティングをする必要性もあるかと思います。

しかしながら、問い合わせ窓口のコールセンターから、技術などの専門部署、営業が1つの情報(ワン・ファクト)を見て対応を行っている場合の、お客様からの問い合わせに対する満足度向上は、そうではないケースに比べて、即座に定量的効果をもたらす事を強調して、今回のコラムの閉めとさせて頂きます。


次回は、ファクトの共有から一歩進んだ共有について話を進めさせていただきたいと思います。

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「SFAのビジョンや目的を共有する」 第三回 2008.7.24
佐藤 紅志

前回のコラムでは『「SFAのビジョンや目的」とは具体的にどういう事か』を検討する上で、SFAツールに求められることとはどのようなものか、また、それが営業活動にとってどのように役だっていくのか、いかないのかについて、考察を進めてみました。第三回のコラムでは、SFAの「ビジョンや目的」を共有するという点について、具体的な例をもとに話を進めてみたいと思います。

前回の事例では、感触の良かった商談が、あるフェイズでスタックしている要因として

「想定を超える原油・原材料高の影響を受けて、今期の予算執行は凍結する事が役員会で決定しました。例外的な執行には、その予算の必要性を通常のルートとは異なるアプローチで説く必要があるが、可能性は低いので今期執行はできそうもない」

という連絡をうけた例をとりあげました。

この場合、その情報をどのように組織として活用すれば、商談を進捗させる可能性を高められるのでしょうか。または、この商談は顧客の言うとおり、凍結させた方が良いと判断するのは、誰が、何を基準としたら良いのでしょうか。

担当営業マンと、顧客側の担当者は、既に責任領域を超えた要件によって、思考が停止しています。従って、基本的には、この商談は消滅したとも考えられるのかもしれません。予算凍結の事態に直面した担当者や営業マンに、出来る事はそう多くはないでしょう。

とりあえず、担当営業マンは、いつもの習慣で、この情報を、外出先の携帯電話から自身の外出予定に付加する形で「そのまま」報告します。

外出先で入力した活動報告を、社内でやきもきしながら待っていた人物がいます。そうです、担当営業の上司です。打合せの終了とほぼ同時に入力されたこのテキストを見た上司は、即座にコメントを登録します

『「通常のルートとは異なるアプローチ」とはどのような事なのかを、具体的に聞いてくるように』

忙しい顧客の担当者ではありましたが、日頃の人間関係が良好だったせいか、翌日には、担当営業が決済をあげる部門長に面会が叶い、上司に言われた質問をさせて頂く事ができました。

彼が打合せ終了後に、次のお客様までに移動する間のカフェで入力した、上司からのコメントに対する返信にはこう書いてありました。

「原価向上緊急対策による予算執行停止後の、例外予算執行会議が、毎月第3水曜日に開かれており、今期に限っては、以下2点に該当するもののみが承認され、それ以外は、来期以降の検討課題とされているとのことでした」

(1)承認金額は例外なくxxxx万以内
(2)社内規定に沿ったROIを実現出来る事

以上は、あくまでも、例としてあげてはおりますが、この話は、筆者の実体験にもとづく実話に近いものです。上記の条件を情報として入手した時点で、この商談をかなり有利に進めることが出来たことは言うまでもありません。担当営業は、上記の2点の条件を提示されてもピンと来ていなかったようですが、重要な情報を良いタイミングで聞き出してくれました。

「SFAのビジョンや目的」と言うと、なにやら大上段に構えた口上を想像される事が多いかも知れませんが、私たちが考えているのは、もっと身近なものです。初回のコラムにもありましたが、そのポイントを以下に列挙し、今回のコラムの締めとさせていただきます。

1.顧客とのやりとりから生まれる情報は、組織全体で共有理解する。
・もっとも大事なことは、情報の鮮度であることは上記事例にもあげました。
・その為に携帯やモバイルなどのデバイスから、簡単にその情報を記述できることも重要です。
・何よりも、鮮度を維持した情報を、組織で共有する事の大切さを理解している事が肝心です。

2.営業の顧客接点としての重要性を、自社の文化やDNAを加味して、わかりやすく伝えていく
・上記の例でも、営業マンが上司からのコメントを見て、すぐに顧客担当者に次のアポをいれ、情報を聞き出す事をしなければ、なにも起きませんでした。
・たとえ、どのように素晴らしいツールを使用しても、意識と行動変化を伴わない限り、効果を発揮する事は出来ません。ビジョンや目的の共有が、大事であるというのは、正にその事を表しているのです。

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「SFAツールに求められる事とは」 第二回 2008.6.26
佐藤 紅志

初回のコラムでは、SFAを定着させる重要性と、その為の2つのポイントについて述べました。
今回は、1つ目のポイントとしてあげていた「SFAのビジョンや目的を共有する」という事について少々掘り下げて考察をしてみます。


「SFAのビジョンや目的」とは具体的にどういう事かを考える前に、SFAというツールについての共通認識が必要と考えますので、その点について確認をしてみましょう。

いわゆるコンピューター用語としてのSFAは「Sales Force Automation」の略である事からも、営業プロセスのオートメーションを目指したシステムと定義できるかと思います。
ただし、sales forceというイディオムは、ニュアンス的には販売員または営業部隊に近く、プロセスというよりは、営業マンの管理を目的としている傾向もあります。

実際に初期のSFAは、商談や活動報告の記入フォーマットやアウトプットを標準化し、そのプロセスを管理することに主眼がおかれていたため、顧客の事情や顧客との関連性をどのように表現するかという課題にはあまり配慮がされていませんでした。

もちろん、商談のプロセスを標準化し、みえる化する事は、そのこと自体に意味が無いわけではありませんが、プロセスとその結果を共有する事のみでは、真の支援ツールとはならなかった事も、定着が進まなかった一因ではないかと筆者は考えています。

特に、日本の市場においては、営業マンと顧客の信頼関係や心理的近接性が意思決定要因に影響を及ぼすという性質があり、かつ、昨今の「ものあまり」「少子高齢化」という外部環境のもと、営業現場における顧客関係性の重要度が高まっているという状況があるわけです。

それらの要因を顧みずに、結果共有のみを行ったのでは、どのようにしたら商談が獲得できるかという道筋とはならないという事実があります。
商談獲得に役に立つと感じられるシステムであれば「使われなくなる」などということはありません。

日本独自の意思決定要因の善し悪しや、外部環境の本質的変化とその要因を論じることは本稿の主旨からは外れますので、別の機会にとりくみたいとは思いますが、営業活動の各プロセスにおいて「どのようなやり取りがあったのか」をマスキングした上で、「プロセスのステータスをデジタル情報としてのみ」取扱い、営業マンを管理するだけでは、商談の掘り起こしや成約へのプロセスに寄与しない事は容易に想像できると思います。

一例をあげれば、社内で有望と思われていた商談が、顧客企業からの「想定を超える原油・原材料高の影響を受けて、今期の予算執行は凍結する事が役員会で決定しました。例外的な執行には、その予算の必要性を通常のルートとは異なるアプローチで説く必要があるが、可能性は低いので今期執行はできそうもない」いう連絡をうけたとします。

そうして、その時点のステータスとして「断られました」と、○か×かで表現するようなツールでは、適切な対応が取れるでしょうか?、この場合、どのような「組織としての知」と「個人のアイデア」を融合したら、この難題をクリアすることが出来るのでしょうか。

重要なことは、物事を標準化・構造化して捉えるときに、できる事と、そうでは無い事があるということです。
そして、意思決定要因に大きな影響を及ぼすような事象は、構造化されていない情報に起因するという事が、多種多様な業種業界の商品を、販売する現場で実際におきている事は否定のしようがありません。

それらを踏まえて「SFAのビジョンや目的」を推進する組織、メンバーが共有するためには何が必要なのでしょうか。次回はその点について考察を進めたいと思います。

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「SFAは、定着しなければ始まらない。」 第一回 2008.5.19
コンサルタントO

営業の顧客接点としての役割の重要性

SFAシステムは、SFAという言葉が入ってきた1990年代から、定着しないシステムとしての長い歴史がある。定着しない理由の多くは、「やらされ感」「自分の役に立たない」「時間がない」など営業からのブーイング類だ。営業の重要な役割の1つに、顧客接点として、要望や課題など顧客の声をきちんと、自社の組織に伝え、組織で共有するということがある。市場が固定市場から、より多様性を含む変動市場へと加速していく中、顧客の変化についていくためには、顧客接点でその情報をとらえるしかない。その意味では、顧客接点である営業の役割が、変動市場の下では、相対的に重要になってきているともいえる。

営業の顧客接点としての役割の重要性に伴い、営業を支援していくシステムであるSFAは、顧客を起点としたプロセスのフロントシステムとして重要性が増してくる。顧客接点の役割をもつ営業が、SFAを使わなければ、SFAを使用する営業関係部門だけでなく、バックエンドのシステムに情報が入ってこない状態になってしまう。まさに、SFAは、「定着しなければ始まらない」→「定着しなければならないシステム」なのだ。

定着を手に入れるためには・・・・

SFAの定着を手に入れるためには、2つのポイントが考えられる。

1つめは、SFAのビジョンや目的を共有するというポイントである。営業自身が、なぜ、なんのためにSFAを使っていくのかを、理解していなければ、また「やらされ感」の蔓延である。さきほど、触れたように、営業の顧客接点の役割は、今後ますます重要になる。そこで顧客とのやりとりから生まれる情報は、組織全体で共有し、理解していく必要がある。SFAを導入するにあたっては、SFAを推進する営業推進部門などが、営業の顧客接点としての重要性を、自社の文化やDNAを加味して、わかりやすく伝えていく努力が必須である。

2つめは、シンプルにSFAを運用するというポイントである。昨今、多機能で複雑かつ高度な機能を持つSFAも多いが、あまり経営環境によって、変わってくる戦略的な機能をとりこみすぎると、環境が変化した場合、逆に変化についていきづらくなるパラドックスに陥る可能性がある。それに、機能が増えすぎると、営業にとっては、入力負荷が増え、理解しづらくなるばかりである。従って、ポイントとしては、営業にとってのPDCAの実践に役立つ、基本的な機能をシンプルな運用でまわして行くということが重要になってくる。

「SFAは、定着しなければ始まらない」。組織メンバー全員が、SFAの推進ビジョンに共感し、環境変化に強いシンプルな仕組みを利用していく。それが、定着するSFAの1つの成功イメージではないだろうか?

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